今回は、病気による子の介護のため一定期間休みたいという職員がいる医院からのご相談です。
育児休業から復帰して3ヶ月が経つ職員から、「実は子どもに重篤な病気があり、手術を受けた後に1ヶ月程度自宅療養が必要と診断が出ているので休みたい」との相談がありました。
一時的に休んでも働き続けて欲しいと考えていますが、休職とすればよいのでしょうか。
医院に今回のケースで休職できるような制度があれば、休職制度の利用も考えられますが、そのほかに、介護休業の制度の活用が考えられます。
介護休業は、高齢者だけでなく、病気やケガをした子どもに介護が必要な場合や障害がある場合、医療ケアを必要とする場合にも活用することができます。
また、介護休業中に医院から給与が支払われない場合、雇用保険から介護休業給付金が支給されます。
介護休業とは、要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護が必要である状態)にある対象家族の介護や世話をするための休業です。
原則、日雇い職員を除くすべての職員を対象とし、対象家族1人につき最大3回まで、通算93日まで取得できます。
なお、「対象家族」とは、配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母を指します。
また、介護休業は育児休業と異なり、対象の子どもの年齢による制限はありません。
そのため、医院に今回のケースで利用できる休職制度があるときは、休職を命じることも選択肢となりますが、育児・介護休業法に基づく介護休業の取得も選択肢に挙げられます。
常時介護が必要な状態とは、文字どおり常態的に介護を必要とする状態をいいます。介護保険制度の要介護状態区分において要介護2以上であれば該当するほか、「座位保持」等の12項目について、対象家族の状態から判断されます。
2025年4月1日に、この判断基準について、子どもに障害がある場合や医療ケアを必要とする場合等も踏まえ、見直しが行われました。
雇用保険に加入する職員が介護休業を取得した場合で、医院から給与が支払われないのであれば、雇用保険から介護休業給付金が支給されます。受給のためには一定要件を満たす必要がありますが、介護休業を取得した職員にとっては貴重な収入となります。
「介護」という表現からは、高齢の両親や祖父母の介護をイメージしがちですが、育児・介護休業法ではより広い範囲が想定されています。介護休業のほかにも、介護休暇など、仕事と介護の両立支援のための様々な制度が用意されていますので、状況に応じた制度を活用していきたいものです。
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